|
金属の腐食
●湿食と乾食
金属が使用環境で化学的あるいは電気化学的反応によって侵食される現象が腐食である。水分が関与する場合を湿食といい、水分が伴わない場合は乾食という、腐食はこの二つに大別される。湿食は水中、地中、あるいは大気中など比較的低温でみられ腐食の大部分をしめる。乾食は高温の空気あるいはガスによる酸化反応で、高温酸化とも呼ばれる。
●腐食の電気化学的機構
水中における金属の腐食は電気化学的反応に基づいて進行する。酸化反応(アノード反応)と同時に還元反応(カソード反応)を伴い.腐食が進行すると金属は金属イオンとなって溶液中に移行し、水素イオンは水素ガスあるいは溶存酸素によって水になる。
アノード:M →Mn++neー
カソード:2H+ +2eー→H2(酸性溶液、水素発生)
O2+4H++4eー →2H2O(酸性溶液、酸素還元)
O2+2H2O+4eー→4OHー(中性またはアルカリ性、酸素還元)
金属が腐食するにはアノードとカソード反応が金属表面で等しい速度で同時に起こる。
●中性溶液中で鉄が腐食する反応式
アノード: 2Fe→2Fe2++4eー
カソード: O2+2H2O+4eー→4OHー
全反応:2Fe+O2+2H2O→ 2Fe(OH)2
この化合物に酸素および水の供給をうけて2Fe(OH)2+H2O+1/2O2→2Fe(OH)3赤さびとなる。さらに水和酸化鉄(FeOOH)またはFe2O3・nH2Oに変化する。このとき酸素が不足するとFe3O4・nH2O(黒さび)となり、実際の鉄のさびは表面が赤さび下地が黒さびの2層構造となっていることが多い。
水温と溶存酸素量の関係
●腐食電池
●異種電極電池 異種金属との接触、あるいは同一種類で組成比・組織・結晶方位が異なる等で金属表面において形成される腐食電池。
●濃淡電池 腐食電池の中で最も多くみられる。同一金属が濃度の異なる同種の電解質溶液に別々に浸漬されたときに形成される電池。
1塩濃淡電池 / 溶液に濃度差があると、希薄溶液に接した箇所で腐食が起こる。
2通気差電池 / 同一濃度の溶液であっても溶存酸素量に差があると空気を含まない極がアノードとなって電流が溶液中に流出(腐食)する。例えばさびの真下は周辺部より酸素不足となり腐食される。また水面付近は大気からの酸素の供給が多くカソード部となるが、その下部は酸素が少なくアノード部となって腐食する。
金属の合わせ目、ボルトの下、ガスケット面および他の物質の付着面などでみられる隙間腐食(crevice
corrosion)は、このような濃淡電池の形成による。酸素の少ない内部がアノードとなって腐食されるが、進行すると金属イオンや水素イオンが蓄積し塩濃度の増加とpHの低下により腐食は一層加速される。
●温度差電池 温度変化によって生じる電位差よる電池。暖部がアノード冷部がカソードとなる。ボイラー、熱交換器、投込みヒーターなどで発生することがある。
●標準電極電位
金属の腐食傾向は腐食電池の起電力の大きさによって表すことができる。一般に標準水素電極を基準に各金属の標準電極電位を大きさの順にならべ電気化学列と言う。負の大きな値を卑あるいは電位が低い(あるいはイオン化傾向が大きい)、正の大きな値を貴あるいは電位が高い(イオン化傾向が小さい)と表現される。金属の基本的な腐食傾向がわかるが、実際の電位は環境と金属の表面状態で異なる。
●異種金属の接触と腐食
電極電位が異なる金属が接触しそれに電解質溶液が存在すると卑な金属が腐食される、異種金属接触腐食あるいはガルバニック腐食(galvanic corrosion)と呼ばれる。接触する金属の電位差が大きい程、さらに卑な金属に対する貴な金属の表面積が相対的に大きい程、影響は大い。
ステンレスと炭素鋼、銅と炭素鋼などの異種金属が接触している場合、いずれも炭素鋼単独の場合よりも腐食が加速される。加速される原因は酸素である、貴な金属がカソード反応の場を提供するので、それに見合ったアノード反応としての溶解が炭素鋼で起こる。
●脱成分腐食
腐食により合金成分の特定元素が選択的に溶出する現象を、脱成分腐食または選択腐食と呼ぶ。このような腐食をうけた金属は、寸法変化は少ないが表面の変色、強度や延性の低下等が著しい。
水道用金具としてよく使われている銅亜鉛合金の真ちゅう腐食では、合金組成の亜鉛が溶出し脱亜鉛腐食と呼ばる。Au−AgおよびAu−Cuのような貴金属合金にも、分金といわれる脱成分腐食がみられ、Auより卑な金属が溶出する。
●銅や亜鉛の腐食
鉄以外の銅管や亜鉛めっき鋼管の腐食も要因は水中の溶存酸素である。銅は貴な金属で、本来、耐食性を有する金属であるが、しばしば温水中で孔食や潰食などのピンホールを生じることがある。孔食は地域や用途によって起こる場合と起こらない場合がありメカニズムはまだ明確になっているとは言えない。潰食は水流速が高い場合に銅管内面に馬蹄形の侵食を起こすがこれも電池作用が主体なのである。水流速が高いと酸化膜を破壊し裸になった銅の表面で電池作用による腐食が増大するのが原因である。
|